SWP | 365日、海! サーフィンと海遊びのブログマガジン

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有本圭自伝 『少年おじさん』  第1話 とある占い師の話

今から20年ほど前だろうか。
友人のSと横浜中華街をヘベレケに酔っ払いながら、フラフラと漂うように歩いていた。
酒の力を借りて、2人とも上機嫌でかなり気が大きくなっていた。
今から思うと街のド真ん中で悪ふざけしたり、奇声を発したり、通行人にちょっかいを出したり、まったくタチのの悪い若者だったと思う。

約20年まえの有本圭 チャラっ

約20年まえの有本圭 チャラっ

赤を基調とした華やかなネオンが街を照らしていた。
夜だということが信じられないくらいに明るく、行き交う人々の誰もが幸せそうに映った。
時はバブル全盛。
当時学生だったボクらはその恩恵を受けた記憶がほとんどないが、それでもやはり今から思うと華やかな時代だった。
賑わしいメイン通りから小さな路地に入ると辺りは一気に暗くなったが、それでもボクらは踊るように歩いていた。
その日一緒にお酒を飲んだ女の子たちはトビキリに可愛かった。
山下公園の近くにあるCというクラブでナンパしたのだ。
「お前どっちだよ」
「俺は赤のドレスの方だな」
「まじ?俺は水色の方が断然いいな」
どうやらボクらは無用な争いはしなくていいようだった。

2人ともきっちり電話番号を聞き出していたが、当時は自宅の電話番号を交換していた。
何しろ携帯電話なんてまだ登場していない時代だ。
女の子に電話するときには、今では味わえないようなキリキリとした緊張感が強いられる。
なんていったって相手のお父さんが電話口に出る可能性だって十分にあるのだ。
訝しげな声で「どちらのアリモトさん? 娘に何の用?」なんて言われてしまうことだって珍しくはなかった。
「お前何時だと思っているんだ、もう2度と電話してくるなっ」なんて怒鳴られることだってあったのだ。
たかだか20年前なのに今とはまったく違う時代だった。

僕もSも完全に酔っていたが、車の停めてある駐車場に向かっていた。
飲酒運転は現在と同様で違法ではあったが、わりとフツーに飲酒運転をしていた時代だった(ように思うがボクらだけだろうか)。
蛇行するように歩いていると、道端にぼんやりとオレンジ色の光が揺れているのが見えた。
酔った眼をこすりながらよく見てみると黒っぽいサテン地の布を垂らしている机の上に肘をついている眼鏡をかけたオジサンが座っていた。
机の上にはろうそくが揺れており、『手相』と達筆な字で書かれていた。
そのオジサンはいかにも易者らしく、黒い宗匠頭巾(よく易者が被っている帽子)を頭に乗せていた。
ボクはうまく焦点の定まらない視線を友人になんとか合わせて、どちらからともなく「やってみっか」と悪戯小僧のように笑った。
今までも何度か道端に座っている易者を見たことがあったが、占ってもらうことはこれが初めてだった。
まさに『酔った勢い』というやつであった。
ボクはヘラヘラしながらそのオジサンに近付いていった。
「おっちゃん、いくらでみてくれんの?安くしてよ。」と声をかけた。
ボクたちが近付いてくるのを予期していたかのように落ち着いた様子で眼鏡の奥の細い眼が僕をとらえた。
「んー、そうですね。1000円でいいですよ。特別ですよ」と静かに微笑んだ。
恐らく僕たちの風体を見て、そうお金を持っていないことを察したのだろうか。
「1000円ならやってみようぜ」とSがそれに食いついた。
「まずは俺からだぞ、俺が最初に話しかけたんだからな」とボクはサッとその易者の前に置いてある椅子に腰かけた。
机の上には何やら難しそうな乱数表のようなものと、怪しげな古書が置かれていた。
その易者はゆっくり眼鏡をかけると、「では」と言って、僕の生年月日、名前を聞き、それをメモした。
そのメモを元にその古書を開き、右手の親指をペロッとなめてページをめくっていった。
あるページで手を止め「ふんふん」と頷きながらささっとメモをとった。
なんだか、その所作の一つ一つが厳かに映り、アルコールの影響で頭の中にかかっていた靄のようなものがすっと晴れていくようだった。

「では左手を見せて」と言いながら、易者の鋭い視線が一瞬ボクの目を捉えた。
「手相で本当に人の人生がわかんの?」とボクは強がった。
完全にこの易者ペースに乗ってしまうのがちょっと恐ろしかったのだ。
眼鏡の奥の細い目は僕の左手を捉えながら「わかりますね、ある程度は。でもこれはあくまでも今の時点での未来がわかるということです。もし、今の時点で明るい未来が待っていたとしても、努力を怠ったり傲慢になったり感謝の気持ちを忘れてしまうとその明るい未来は消えてしまうこともあるんです。逆に、暗い未来が待っていたとしてもそれは変えることはできるんですよ。本人の努力によって。占いはあくまでも今の時点で見える未来を伝えるにすぎないんですよ」と淀みなく言った。
「てことは当たっても当たんなくってもいくらでも言い訳できちゃうってことじゃね?」とツッコミを入れながらも僕もなぜか自分の左手を見つめていた。
「まあそういうことになりますかね」とその易者は静かにボクの左手から目を上げて軽く微笑んだ。
「はい、次は右手」と言われたので、慌てて右手を出した。
ちょっと長めの沈黙の後、ゆっくり眼鏡を外しながらその易者はボクの右手から目線を上げてボクの目をまっすぐ見た。
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