SWP | 365日、海! サーフィンと海遊びのブログマガジン

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有本圭自伝『少年おじさん』 第8話 フィッシュくんのくせに

ベトナムでのすったもんだの影響で一躍有名になってしまった僕。
まあ、あまりいいイメージで有名になったわけではなかったが、乗客の間での知名度が上がったのは間違いなかった。(前回はこちら

完全にスリランカ人化した有本圭 ~スリランカ~

完全にスリランカ人化した有本圭 ~スリランカ~

僕を乗せた船は順調にシンガポール、マレーシア、スリランカに立ち寄りつつ、徐々に赤道へと近付いていった。
船を下りるたびに、
「お、けいくん、ちゃんと時間どおりに帰ってこないとダメだよっ」
などと様々な人からイジラレたが、なんだか有名人になったようで悪い気はしなかった。

船での生活は実は案外単調で、毎日毎日同じところで食事をし、海を眺め、本を読み、同じ人たちと会話をする。
22歳だった僕にはエネルギーが有り余ってしまい、船内生活が2週間を過ぎたあたりからちょっと物足りなさを感じるようになってきてしまっていた。
乗船後、すぐに付き合い始めたMちゃんともなんとなくぎくしゃくし始めた。
まだ若かった僕にとって、毎日毎日特定の彼女と顔を合わすということが徐々になんとなく窮屈に感じ始めてしまったのだ。 続きを読む…

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有本圭自伝『少年おじさん』  第2話 人生が動きだした電話

思い返してみると、まったくひょんなことから人生というのは大きく動いていく。
僕は21歳になっていた。
特になんの目標も、夢もなく、ただ、親のスネをかじりながら日々『楽しいこと』を探しまわるという自堕落な生活を送っていた。

そんなある日曜日のできごとである。
朝陽というにはちょっと遅すぎる時間だったが、初冬のまだ暖かさを残している日差しが我が家のリビングに降り注いでいた。
日曜日にだけ休みを取る父親も、パジャマ姿のままソファでのんびりと朝日新聞を眺めていた。
僕は寝ぼけ眼のままテーブルの上に置いてあった日刊スポーツに手を伸ばした。

例のごとく僕の嫌いな巨人の選手が一面を飾っていた。
今年もどうやら巨人が強いようだ。
僕の応援している広島カープは1991年の優勝を最後に低迷していた。
貧乏球団というハンデを抱えながら、必死に戦っている姿に惹かれ、4歳の時からの熱狂的なカープファンなったのだ。

少年時代からきっちりカープファンの有本圭

少年時代からきっちりカープファンの有本圭

そんなカープに引き替え、金の力にものを言わせ、一流選手を買いあさっている巨人には激しい対抗心を燃やしていたのだ。
当然、今朝の新聞でも巨人が大きく取り上げられている一面、二面はパスし、三面の片隅に申し訳程度に載っているカープの試合結果を入念にチェックしていた。
試合に負けていても、誰が何打数何安打だったか、など細かくチェックするのが習慣になっていた。
そんな風に、いつもの平和な休日の朝を過ごしていた。 続きを読む…

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有本圭自伝 『少年おじさん』  第1話 とある占い師の話

今から20年ほど前だろうか。
友人のSと横浜中華街をヘベレケに酔っ払いながら、フラフラと漂うように歩いていた。
酒の力を借りて、2人とも上機嫌でかなり気が大きくなっていた。
今から思うと街のド真ん中で悪ふざけしたり、奇声を発したり、通行人にちょっかいを出したり、まったくタチのの悪い若者だったと思う。

約20年まえの有本圭 チャラっ

約20年まえの有本圭 チャラっ

赤を基調とした華やかなネオンが街を照らしていた。
夜だということが信じられないくらいに明るく、行き交う人々の誰もが幸せそうに映った。
時はバブル全盛。
当時学生だったボクらはその恩恵を受けた記憶がほとんどないが、それでもやはり今から思うと華やかな時代だった。
賑わしいメイン通りから小さな路地に入ると辺りは一気に暗くなったが、それでもボクらは踊るように歩いていた。
その日一緒にお酒を飲んだ女の子たちはトビキリに可愛かった。
山下公園の近くにあるCというクラブでナンパしたのだ。
「お前どっちだよ」
「俺は赤のドレスの方だな」
「まじ?俺は水色の方が断然いいな」
どうやらボクらは無用な争いはしなくていいようだった。

2人ともきっちり電話番号を聞き出していたが、当時は自宅の電話番号を交換していた。
何しろ携帯電話なんてまだ登場していない時代だ。
女の子に電話するときには、今では味わえないようなキリキリとした緊張感が強いられる。
なんていったって相手のお父さんが電話口に出る可能性だって十分にあるのだ。
訝しげな声で「どちらのアリモトさん? 娘に何の用?」なんて言われてしまうことだって珍しくはなかった。
「お前何時だと思っているんだ、もう2度と電話してくるなっ」なんて怒鳴られることだってあったのだ。
たかだか20年前なのに今とはまったく違う時代だった。

僕もSも完全に酔っていたが、車の停めてある駐車場に向かっていた。
飲酒運転は現在と同様で違法ではあったが、わりとフツーに飲酒運転をしていた時代だった(ように思うがボクらだけだろうか)。
蛇行するように歩いていると、道端にぼんやりとオレンジ色の光が揺れているのが見えた。
酔った眼をこすりながらよく見てみると黒っぽいサテン地の布を垂らしている机の上に肘をついている眼鏡をかけたオジサンが座っていた。
机の上にはろうそくが揺れており、『手相』と達筆な字で書かれていた。
そのオジサンはいかにも易者らしく、黒い宗匠頭巾(よく易者が被っている帽子)を頭に乗せていた。
ボクはうまく焦点の定まらない視線を友人になんとか合わせて、どちらからともなく「やってみっか」と悪戯小僧のように笑った。
今までも何度か道端に座っている易者を見たことがあったが、占ってもらうことはこれが初めてだった。
まさに『酔った勢い』というやつであった。
ボクはヘラヘラしながらそのオジサンに近付いていった。
「おっちゃん、いくらでみてくれんの?安くしてよ。」と声をかけた。
ボクたちが近付いてくるのを予期していたかのように落ち着いた様子で眼鏡の奥の細い眼が僕をとらえた。
「んー、そうですね。1000円でいいですよ。特別ですよ」と静かに微笑んだ。
恐らく僕たちの風体を見て、そうお金を持っていないことを察したのだろうか。
「1000円ならやってみようぜ」とSがそれに食いついた。
「まずは俺からだぞ、俺が最初に話しかけたんだからな」とボクはサッとその易者の前に置いてある椅子に腰かけた。
机の上には何やら難しそうな乱数表のようなものと、怪しげな古書が置かれていた。
その易者はゆっくり眼鏡をかけると、「では」と言って、僕の生年月日、名前を聞き、それをメモした。
そのメモを元にその古書を開き、右手の親指をペロッとなめてページをめくっていった。
あるページで手を止め「ふんふん」と頷きながらささっとメモをとった。
なんだか、その所作の一つ一つが厳かに映り、アルコールの影響で頭の中にかかっていた靄のようなものがすっと晴れていくようだった。

「では左手を見せて」と言いながら、易者の鋭い視線が一瞬ボクの目を捉えた。
「手相で本当に人の人生がわかんの?」とボクは強がった。
完全にこの易者ペースに乗ってしまうのがちょっと恐ろしかったのだ。
眼鏡の奥の細い目は僕の左手を捉えながら「わかりますね、ある程度は。でもこれはあくまでも今の時点での未来がわかるということです。もし、今の時点で明るい未来が待っていたとしても、努力を怠ったり傲慢になったり感謝の気持ちを忘れてしまうとその明るい未来は消えてしまうこともあるんです。逆に、暗い未来が待っていたとしてもそれは変えることはできるんですよ。本人の努力によって。占いはあくまでも今の時点で見える未来を伝えるにすぎないんですよ」と淀みなく言った。
「てことは当たっても当たんなくってもいくらでも言い訳できちゃうってことじゃね?」とツッコミを入れながらも僕もなぜか自分の左手を見つめていた。
「まあそういうことになりますかね」とその易者は静かにボクの左手から目を上げて軽く微笑んだ。
「はい、次は右手」と言われたので、慌てて右手を出した。
ちょっと長めの沈黙の後、ゆっくり眼鏡を外しながらその易者はボクの右手から目線を上げてボクの目をまっすぐ見た。
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有本圭自伝 『少年おじさん』 はじめました

かっちり中年になっても、嫁からは「けいくんってさあ、ほんと小学生だね」と言われている。
妹からは「あんちゃん,いつまでたっても少年だもん」と笑われている。
自分でいうのもナンではあるが、『少年おじさん』という言葉がぴったりなのである。

そんなしょうもない私、有本圭の半生を振り返ってみようとペンを取った、というかキーボードを叩き始めた。
なぜいきなり?アンタの半生になんて興味ないよ、とお思いでしょう。
わかります。そのお気持ち。
ただただ私事で、ここらで一度振り返っておかないとこの先もいろいろなことがあり過ぎてもう2度と振り返るチャンスがこないような気がするのだ。

ボクの半生の物語を読んだところで、勇気や感動を得たり、明日への生きる糧になったり、人生観が180度ひっくり返ったり、なんてことは一切ないだろう、ということを予め高々と宣言しておきたいと思う。
ただ「ああ、こんなバカがこの世にいるんだな~」もしくは「こんなバカでも生きていけるんだな~」というくらいの物語なのである。

17年分の日記

17年分の日記

そんなボクにも自慢できることがあるのです。
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